七夕祭りに行われていた「眠り流し」という行事が、ねぶた祭りの起源だとされています。
かつて旧暦の7月7日に日本各地で「眠り流し」が行われていました。夏の暑い時期、農作業の最中に襲ってくる睡魔を祓うために、沐浴をしたり、 形代（かたしろ）や合歓木（ねむのき）を、灯籠や笹舟などに乗せて川や海に流すという行事です。
合歓木は、夜になると葉が閉じてまるで眠っているように見えることから名付けられました。 眠た木（ねむたぎ、ねぶたぎ）と呼ぶ地方もあります。この合歓木と豆の葉を一緒に流すことで睡魔を流してしまおうという 思いが込められています。豆はお節の黒豆と同じように「マメに暮らす」に掛けています。
流すときに唱える言葉がこちら。色々バリエーションがあるようです。
- 「ネムは流れろ、豆の葉止まれ」
- 「ねぶた流れろ、豆の葉さ止まれ」
この「眠り流し」は地方によって「ねぶり流し」「ねぶた流し」「ねんぷた流し」「ねぶと流し」「おねんぶり」など色々な名前で呼ばれていました。この行事が年月を経て、現在のねぶたになりました。
天明8年（1788年）に弘前藩士の比良野貞彦氏によって書かれた「奥民図彙（おうみんずい）」という書物があります。当時の津軽地方の庶民の生活が描かれており、その中には「子ムタ祭之図」という江戸時代のねぶた祭の様子が描かれています。 そこに「子ムタハナカレロマメフハワトゞマレトハヤスナリ」とあり、ねぶた祭りが眠り流しの系統であることがわかります。
ちなみに・・・
秋田の竿灯や仙台の七夕も、この眠り流しを起源としています。 竿灯は昭和の始めまでは「ねぶり流し」という名称でした。 富山県滑川市は国指定重要無形民俗文化財に登録されている「ねぶた流し」という行事が行われており、また富山県黒部市の「中陣のニブ流し」や「尾山の七夕流し」も眠り流しが起源とされています。民俗学者の柳田国男氏は1936年（昭和11年）発表の「眠り流し考」の中で眠り流しをルーツとする行事が日本中にあると書いてあります。
こんな説もあります
①以前は主流だった坂上田村麻呂説
平安時代。 大和朝廷の桓武天皇が、東北地方を支配しようとして、坂上田村麻呂を送り込みました。敵であったエミシを油断させて、おびき寄せるために、大きな灯籠を作り、笛や太鼓で囃し立てたという説。
②津軽の英雄、津軽為信説
文禄2年（1593年）7月、津軽藩主の津軽為信公が京都に滞在中、盂蘭盆会で二間四方（3.6m）の大きな灯篭をつくり、津軽の大燈籠として遠国まで知れ渡ったという説。
